看護師の腰痛とその対策【看護師向け完全ガイド】

看護師

看護師にとって腰痛は非常に一般的な問題であり、仕事のパフォーマンスや健康に大きな影響を及ぼします。腰痛は長時間の立ち仕事、重い患者の移動、または不適切な姿勢などが原因で発生することが多く、日々のケア業務で発生しやすい職業病です。実際、日本国内の調査では、看護師の約60%が腰痛を経験しているとされており、これは看護師の職務遂行における大きな課題となっています。病院によっては腰痛対策の委員会などの活動が行われている医療機関もあります。本記事では、看護師の腰痛の原因とその対策について詳しく解説します。

看護師の腰痛の原因

  1. 長時間の立ち仕事と歩行
    • 看護師はシフト中に長時間立ち続けたり歩き回ったりすることが多く、これにより腰に負担がかかります。立ち仕事が続くことで、腰や下半身の筋肉が疲労し、結果として腰痛を引き起こします。
  2. 患者の移動や持ち上げ
    • 患者の移動や体位交換は看護師の日常業務の一部ですが、この作業を行う際に適切なボディメカニクスが取れないと、腰に過度な負担がかかり、腰痛を引き起こします。特に、予期せぬ動きや突然の体重変化に対応する際に腰へのダメージが大きくなることがあります。一般的に、20kg以上の重量を持ち上げる際には腰に過度の負担がかかり、特に繰り返し行うと腰痛のリスクが高まります。患者の体重が重い場合は必ず補助器具を使用し、他のスタッフと協力することが重要です。
  3. 不適切な姿勢
    • 看護業務中に前屈みや中腰の姿勢を長時間取ることが多く、これが腰痛の原因になります。不適切な姿勢は腰椎に過度の負担をかけ、筋肉の緊張や椎間板の損傷を引き起こすことがあります。
  4. ストレスと疲労
    • 身体的な負荷に加え、精神的なストレスも腰痛に影響します。ストレスがたまると筋肉が緊張しやすくなり、腰痛を悪化させる可能性があります。

腰痛の対策方法

  1. 適切なリフト技術とボディメカニクスの活用
    • 患者を移動する際は、できるだけボディメカニクスを意識し、膝を曲げて腰を守ることが大切です。腰をねじらずに膝を曲げ、体全体で持ち上げるようにします。また、可能であれば他のスタッフに協力を仰いだり、スライディングシートなどの補助器具を使用しましょう。20kg以上の持ち上げは必ず補助を使うことが推奨されます。
  2. エルゴノミクスの考慮
    • 器具や物品の配置を工夫することで、腰への負担を減らすことができます。例えば、必要な物品は常に手の届く場所に配置し、前屈みになる回数を減らすように心掛けます。具体的な例としては、
      • 薬品や医療器具の配置:頻繁に使用する薬品や器具は、腰の高さから胸の高さの範囲に配置することで、前屈みや不自然な姿勢を避けることができます。
      • 患者移動用の補助具:スライディングシートやリフト装置などの使用を推奨し、身体的な負担を減らします。
      • 調整可能な作業台や椅子:ケアやおむつ交換の際は腰の曲がらない高さにベッドの高さを調整しましょう。姿勢による腰への負担を軽減します。
  3. 体操とストレッチの実施
    • シフトの合間や仕事の前後に腰や下半身を中心にストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性を保ち、腰痛を予防することができます。特に、腰回りの筋肉を伸ばすストレッチやコアの筋肉を鍛えるエクササイズが効果的です。
  4. コアトレーニングの重要性
    • 腹筋や背筋などのコアマッスルを強化することで、腰にかかる負担を軽減できます。プランクやブリッジといったエクササイズを日々のルーチンに取り入れ、体幹の安定を図りましょう。
  5. 適切な休息と姿勢の改善
    • 長時間の立ち仕事や移動が続く場合、適度に休憩を取り、座ることで腰を休めましょう。また、座る際には腰をしっかりと支える椅子を使用し、正しい姿勢を保つように心掛けます。腰を支えるクッションなどの利用も有効です。

腰痛になった場合の対処法

  1. 早期の医療機関受診
    • 腰痛が発生した場合は、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。痛みを我慢して業務を続けると、慢性的な問題に発展するリスクが高まります。医師による診断を受け、理学療法や薬物療法を検討しましょう。
  2. 痛みの管理とアイシング
    • 急性の腰痛が発生した場合は、痛みを和らげるために患部を冷やすことが効果的です。最初の48時間はアイシングを行い、炎症を抑えるようにしましょう。その後は温めて筋肉の緊張を和らげることも有効です。
  3. 理学療法とリハビリ
    • 理学療法士によるリハビリプランを通じて、腰の筋肉を強化し、再発を防止することができます。ストレッチや特定のエクササイズを組み合わせて腰部の機能を改善します。
  4. 業務内容の見直しと負担軽減
    • 腰痛が発生した場合、一時的に業務内容を見直し、腰への負担を減らすことが大切です。上司に相談して、重い持ち上げ作業を避けたり、他の職員と協力して業務を分担するようにしましょう。
  5. 姿勢と動作の改善
    • 腰痛が発生した後も、正しい姿勢と動作を意識することが重要です。腰痛が悪化しないように、物を持ち上げる際の動作や日常的な姿勢の見直しを行いましょう。

看護師としての腰痛対策における役割と具体的な行動

看護師としては、日常業務において腰痛予防を意識した働き方をすることが重要です。特に、患者移動時には同僚との協力を欠かさず、身体に負担の少ない方法を選ぶことが求められます。また、上司に対して腰痛に対するサポートや器具の導入を提案することも、職場全体の腰痛予防に繋がります。腰痛の症状が現れた場合は、早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることも大切です。

まとめ:看護師の腰痛は適切な対策で予防可能

看護師にとって腰痛は避けがたい問題ですが、適切な予防策を講じることで症状を軽減し、仕事のパフォーマンスを向上させることができます。リフト技術の向上、エルゴノミクスを考慮した作業環境、日々の体操やコアトレーニングを通じて、腰にかかる負担を減らしましょう。腰痛を予防するためには、職場全体での取り組みと、個々の意識的なケアが重要です。

タイトルとURLをコピーしました