臨床でよく使う利尿薬についてわかりやすく解説|具体的な併用例も紹介

治療

利尿薬は、体内の余分な水分や電解質を排泄することで、むくみや高血圧、心不全の治療に役立つ薬です。看護師として、各利尿薬の種類ごとの作用や副作用、観察ポイントを知っておくことは、患者の安全管理に欠かせません。この記事では、代表的な利尿薬の種類とその特徴、観察すべき項目を解説します。


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利尿薬の種類と作用機序

1. ループ利尿薬

代表薬剤:フロセミド(ラシックス)錠・注

作用機序:ループ利尿薬は腎臓のヘンレのループに作用し、ナトリウム、カリウム、クロールの再吸収を抑制して尿量を増加させます。特に心不全患者に使用されることが多く、迅速かつ強力な利尿効果を発揮します 。

観察ポイント

• 電解質バランスの管理:ループ利尿薬は低カリウム血症や低ナトリウム血症のリスクが高く、血清カリウム・ナトリウム濃度を定期的にチェックします。

体重と尿量の記録:脱水症状や体重減少が過度でないか注意し、必要に応じて医師に報告します 。

• 尿酸値モニタリング:尿酸値上昇のリスクがあり、痛風歴がある患者には注意が必要です。

2. カリウム保持性利尿剤・アルドステロン拮抗薬

代表薬剤:スピロノラクトン錠、カンレノ酸カリウム静注用

作用機序:アルドステロン拮抗作用により、ナトリウムを排泄しつつカリウムを保持します。他の利尿薬と併用することで低カリウム血症を予防できます 。

観察ポイント

• 高カリウム血症の管理:高カリウム血症が生じやすいため、心電図のモニタリングや筋力低下の有無を確認します。

ホルモン性副作用:スピロノラクトンはホルモン作用により女性化乳房のリスクがあるため、定期的に確認します。

3.バソプレシンV2受容体拮抗薬

代表薬剤:サムスカ錠、サムタス点滴静注用

用機序:サムスカは、バソプレシンV2受容体を阻害することで、腎臓での水分再吸収を抑制し、水分排泄を促進します。その結果、体内の余分な水分が尿として排泄され、浮腫や腹水が改善されます

観察ポイント

  • サムスカ服用後、尿量の増加が期待されますが、過剰な脱水に注意が必要です。尿量が過度に多い場合や、体重減少が速い場合は、医師に報告し、投与量の調整が検討される可能性があります。
  • サムスカを服用する患者には、脱水を防ぐために適切な水分補給が推奨されます。特に夏場や運動後は注意が必要です。
  • ナトリウム濃度が低下する可能性があるため、定期的な血液検査が必要です。症状として、倦怠感、頭痛、めまいが現れることがあるため、患者の訴えに注意します。

併用事例の紹介

単剤で効果が足りなかったり、副作用が出た場合は利尿剤を併用する場合があります。

事例: 重度の心不全におけるフロセミド、スピロノラクトン、サムスカの併用

70歳男性、重度の心不全(NYHAクラスIV)を患い、肺うっ血と浮腫を伴う患者に対して、フロセミド、スピロノラクトン、サムスカを併用した治療が行われました。

  • 治療目的: この併用は、体液貯留を減少させ、呼吸困難の軽減と末梢浮腫の改善を図るためです。フロセミドは強力な利尿効果で体液排出を促し、スピロノラクトンカリウム保持を維持しつつアルドステロンの影響を抑制します。サムスカは特に低ナトリウム血症を改善し、体液バランスを整えるために使用されました。
  • 経過: 初期のフロセミド単独治療では、尿量増加とともに浮腫の軽減が見られましたが、低カリウム血症のリスクが認められたため、スピロノラクトンを追加しました。その後、ナトリウム濃度が低下したためサムスカを併用することになりました。サムスカの導入により、低ナトリウム血症の改善とともに患者の全身状態が改善し、呼吸困難の緩和が確認されました。
  • 副作用管理: カリウム濃度とナトリウム濃度の定期的なモニタリングが行われ、スピロノラクトンによる高カリウム血症のリスクと、サムスカによる肝機能障害の発現に注意が払われました。また、脱水の兆候も観察され、必要に応じてフロセミドの投与量を調整しました。
  • 結果: この併用治療により、患者の浮腫が大幅に改善し、全身状態の安定化が図られました。特に呼吸困難の軽減により、日常生活の質が向上しました。

まとめ

薬剤名フロセミド (Furosemide)スピロノラクトン (Spironolactone)サムスカ (Tolvaptan)
分類ループ利尿薬抗アルドステロン薬 (カリウム保持性利尿薬)バソプレシンV2受容体拮抗薬
作用機序ヘンレ係蹄上行脚でNa⁺/K⁺/2Cl⁻共輸送体を阻害し、Na⁺、水の再吸収を抑制集合管でアルドステロンの作用を阻害し、Na⁺の排出とK⁺の保持を促進バソプレシンV2受容体を阻害して、水の再吸収を抑制し、尿量を増加させる
適応心不全、肝硬変、腎不全に伴う浮腫、高血圧心不全、肝硬変に伴う浮腫、原発性アルドステロン症低ナトリウム血症、水分貯留を伴う心不全、肝硬変
主な副作用低カリウム血症、低ナトリウム血症、脱水、腎機能悪化高カリウム血症、乳房痛、女性化乳房、低ナトリウム血症高ナトリウム血症、口渇、肝障害
禁忌無尿、重度の低カリウム血症高カリウム血症、急性腎不全肝障害のある患者、無尿
注意事項電解質のモニタリングが必要、特にカリウムやナトリウムカリウム濃度の確認が必要、ACE阻害薬やARBとの併用でリスク増大肝機能の定期的なチェックが必要、脱水に注意
半減期約1.5〜2時間約1.3〜2時間約3〜12時間

利尿薬は患者の状態によって作用が異なるため、個別の観察と管理が重要です。電解質異常、血圧変動、脱水リスクなど、患者の状態に応じた細やかなケアが求められます。看護師として、適切な観察と早期の介入が、患者の安全と治療効果を高めるカギとなります。

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