リフィーディング症候群は、栄養不良状態にある患者に急激に栄養を再導入した際に発生する、深刻な代謝合併症です。適切に対処しないと致命的になることもあるため、看護師としてそのメカニズムを理解し、予防することが重要です。本記事では、リフィーディング症候群の原因、発生のメカニズム、そして予防方法について詳しく解説します。
るい痩の患者さんなのになんでカロリー制限してるの？？
それはリフィーディング症候群予防のためですよ
リフィーディング症候群とは？その原因について
リフィーディング症候群は、長期間の栄養不良や飢餓状態にあった患者に急速に栄養補給を行った際に起こります。この状態では、体内の代謝がエネルギーを節約するように変化しており、グルコースを利用する能力が低下しています。そのため、急に大量のカロリーを与えると、身体は急激に代謝を切り替えようとし、電解質バランスの乱れを引き起こすのです。特に、リン、カリウム、マグネシウムといった重要な電解質の急激な変動がリフィーディング症候群の発生に関与しています。
リフィーディング症候群の発生メカニズム
リフィーディング症候群の主なメカニズムは以下の通りです：
- インスリン分泌の急増
- 長期の飢餓状態ではインスリンの分泌が低下していますが、栄養が再導入されると、血糖値の上昇に伴いインスリンの分泌が急激に増加します。これにより、血中の糖分が細胞内に取り込まれるとともに、電解質（リン、カリウム、マグネシウム）も細胞内に移行します。
- 電解質の枯渇
- 特にリンはATP（細胞エネルギーの源）を生成するのに不可欠であり、その不足は心筋、横紋筋、呼吸筋の機能に重大な影響を与える可能性があります。また、カリウムやマグネシウムの不足も心不全や神経筋の異常を引き起こします。
- 体液バランスの変化
- 急激なインスリン作用により、ナトリウムと水が細胞内に引き込まれ、体液バランスの乱れを招き、浮腫や心不全を引き起こすことがあります。
リフィーディング症候群のリスクがある患者の特徴
リフィーディング症候群のリスクがある患者にはいくつかの共通する特徴があります。
- 低BMI：特にBMIが16以下の患者はリフィーディング症候群の高リスクに該当します。BMIが18.5未満の場合も注意が必要です。
- 長期間の栄養不良：10日以上の絶食や極端なカロリー制限を行っている患者。
- 体重減少：1か月で10%以上の急激な体重減少が見られる患者。
- 電解質不足：低カリウム、低リン、低マグネシウム血症があるとリスクは高まります
リフィーディング症候群の予防方法
リフィーディング症候群の予防には、患者の状態をよく評価し、徐々に栄養を導入していくことが必要です。具体的には以下のポイントを押さえましょう
- 患者の栄養評価
- 栄養不良状態にある患者のリスクを評価します。体重減少、低アルブミン血症、長期間の食事制限などの要因がある患者は特に注意が必要です。
- ゆっくりとしたカロリー摂取開始
- 初期のカロリー摂取量は、推定必要量の20-50%から始め、患者の状態を観察しながら徐々に増やします。最初の24-48時間は特に慎重に観察を行います。目安として、1日あたり5-10 kcal/kgのカロリーから開始し、状態を見ながら増加させることが推奨されます。
- 電解質の適切な補正
- 栄養開始前および開始中に、リン、カリウム、マグネシウムの補正を行います。特に、リンは頻繁にモニタリングし、必要に応じて補充を行います。
- ビタミンの点滴の必要性
- 特にチアミン（ビタミンB1）は、リフィーディング症候群の予防において非常に重要です。栄養再導入前に少なくとも100mgのチアミンを投与し、その後も数日間点滴で継続することが推奨されます。また、他の水溶性ビタミンも適切に補充することで代謝の安定を図ります。
- 臨床モニタリングの重要性
- 血中電解質、血糖、体液バランスを頻繁にモニタリングします。リフィーディングの初期段階で異常が見られた場合は、速やかに対応を取ることが重要です。看護師の臨床的な判断が患者の安全を守る鍵となります。
看護師としての役割と具体的な行動
看護師としては、患者の栄養状態を継続的にモニタリングし、電解質のバランスを確認することが求められます。また、リフィーディングの初期段階で異常が発生しないよう、医師や栄養士と協力して適切な栄養計画を立て、患者の安全を確保します。患者やその家族にも、リフィーディング症候群のリスクや予防のためのケアについて説明し、協力を仰ぐことが大切です。
まとめ：リフィーディング症候群は予防可能な合併症
リフィーディング症候群は、正しい知識と注意深いケアによって予防可能な合併症です。栄養不良状態にある患者のケアにおいて、看護師は重要な役割を果たしています。リフィーディング症候群を予防するために、適切な栄養管理と電解質のモニタリングを徹底しましょう。患者の安全を守るために、専門知識を駆使し、協力的なチームケアを提供することが求められます。
