降圧薬のARNI(アーニー)・エンレストについて解説|高血圧・心不全の薬剤

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1. エンレストとは?

エンレスト(Entresto)は、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)といわれ、「慢性心不全」と「高血圧」に対して使われ、患者さんの生活の質を向上させることを目的としています。特に、心拍出量が低下している「左室駆出率低下型心不全(HFrEF)」に適応されています。

2. エンレストの成分と作用機序

エンレストは、ARNI(Angiotensin Receptor Neprilysin Inhibitor)で、サクビトリル(sacubitril)バルサルタン(valsartan)の2つの成分から構成されています。

  • サクビトリルはネプリライシン阻害薬で、体内のナトリウム利尿ペプチドの分解を抑えることで血管拡張や利尿作用を促進します。
  • バルサルタンはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で、血管を広げ血圧を下げる働きがあります。

この2つの成分が協力して、心臓の負担を軽減し、血液の循環を助ける作用を発揮します。

3. 心不全に対する適応と注意点

エンレストの適応は主に、NYHA分類クラスII〜IVの慢性心不全患者です。特に、従来の治療で十分な効果が得られない場合や、ACE阻害薬やARB単独では効果が不十分な患者に使われます。

注意点として

  • エンレストは、ACE阻害薬との併用が禁忌です。これにより重篤な血管浮腫が起こる可能性があるため、ACE阻害薬の使用を中止してから少なくとも36時間あけてからエンレストを使用します。
  • 腎機能の悪化高カリウム血症も注意が必要です。定期的な血液検査を行い、患者の状態を評価することが大切です。

4. 高血圧に対する作用

エンレストに含まれるバルサルタンはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)として、血管を拡張し、血圧を下げる効果があります。これにより、心臓への負担を軽減し、心不全の悪化を防ぐ効果があります。ただし、高血圧治療におけるエンレストの使用は心不全治療の一環として行われるもので、他の降圧薬と併用することがあります。

5. 慢性心不全と高血圧に対する用法の違い

エンレストはARNIとして、慢性心不全高血圧のどちらにも使用されますが、適応と用法が異なるため、それぞれに応じた適切な使用が重要です。

  • 慢性心不全の場合:
    • 用量:通常、用量は50mgを開始用量とし1日2回経口投与します、2~4週間かけて段階的に患者の反応に応じて100mg,200mgと一回量を増量します。
    • 目的:心臓の負担を軽減し、心拍出量を改善することを目的としています。目標は心臓の機能を維持し、心不全の進行を防ぐことです。
    • 注意点:特に高齢者や腎機能が低下している患者では、低血圧や高カリウム血症のリスクがあるため、モニタリングが重要です。
  • 高血圧の場合:
    • 用量:エンレストの使用は心不全に関連した高血圧管理が目的です。他の降圧薬と併用されることが多く、患者の全体的な状態に応じて用量を調整します。通常、1回200㎎を1日1回経口投与します。適宜増減しますが、最大投与量は1回400㎎を1日1回とします。
    • 目的:高血圧を適切にコントロールすることで心臓への負担を軽減し、心不全の進行を予防します。
    • 注意点:他の降圧薬や利尿薬と併用する場合、過度な血圧低下のリスクがあるため、血圧の監視が必要です。

6. 副作用

エンレストの主な副作用には、低血圧高カリウム血症腎機能障害があります。また、めまい疲労感も報告されることがあります。特に、服用開始初期は低血圧のリスクが高いため、患者の血圧をしっかりモニターすることが求められます。

7. 看護師の役割

看護師としてのエンレストの管理において重要な点は以下の通りです:

  • 血圧と心拍数のモニタリング:低血圧のリスクがあるため、患者の状態を定期的に確認しましょう。
  • 患者教育:エンレストは心不全の進行を遅らせるために重要な薬ですが、副作用の可能性についても患者に説明し、自宅での異常のサインを早期に認識してもらうことが大切です。
  • 飲み合わせの確認:他の降圧薬や利尿薬との併用で血圧が過度に低下することがあるため、医師と協力して適切な調整を行いましょう。

まとめ

エンレストは心不全および高血圧管理において非常に効果的な薬剤ですが、それぞれの適応によって用法や管理が異なるため、適切なモニタリングと患者教育が必要です。看護師として、患者の安全を確保しながらエンレストの効果を最大限に引き出せるよう、積極的に関わっていきましょう。

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