これまの①敵(細菌)を知ろう編、②ペニシリン系を知ろう編に続いて病棟でよく使われるセフェム系の抗菌薬についてわかりやすく解説します
敵(細菌)を知ろう編、ペニシリン系を知ろう編をまだ御覧になっていない方はぜひそちらをご覧ください
セフェム系って?
セフェム系抗菌薬は、βラクタム環を持つβラクタム系抗菌薬の一種です
開発時期や抗菌活性、抗菌スペクトルによって第1世代~第4世代に分類されます。
セファロスポリン・セファマイシン・オキサセフェムの3種類があります
セフェム系の各論
代表的でよく使うセファロスポリン系を4世代にわけて解説します
セファゾリン(第一世代) セフォチアム(第二世代)
・S&S+PEK(ペック) これがセファゾリンのスペクトラムです
いきなりローマ字の羅列がでてきて混乱する気持ちもわかります
これは感染症分野のなかでも有名な語呂合わせで慣れてくると意外と覚えやすいので
具体的には
Staphylococcus spp. ブドウ球菌
Streptococcus spp. 連鎖球菌
→皮膚軟部組織感染症
第一世代からブドウ球菌をカバーできるので蜂窩織炎や手術部位の感染症でよく使用されます
Proteus spp. プロテウス
Escherichia col 大腸菌
klebsiella pneumoniae クレブシエラ
→尿路感染症 ※グラム陰性桿菌のスペクトラムセファゾリン<セフォチアム
セフトリアキソン(第三世代)
これもよくみる抗菌薬だと思います
・S&S+HMPEK(ヘムペック) これがセフトリアキソンのスペクトラムです
第一世代・第二世代セフェム系にHM(ヘム)が追加でカバーできるよになりました
Haemophilus influenzae インフルエンザ桿菌
Moraxella catarrhalis モラキセラ・カタラリス
→上下気道感染症(肺炎や中耳炎)
- S&S→皮膚軟部組織感染症
- HM→上下気道感染症
- PEK→尿路感染症
みての通り市中感染を幅広く網羅している抗菌薬なので、肺炎もありそうだし尿路感染もありそう…
といった場面でも大外ししないため救急外来やはっきりとわからない場合に投与される印象です
逆に、市中感染には使いやすいが緑膿菌など院内感染の原因になる細菌は苦手としています
多くの抗菌薬は腎排泄型であり腎機能に応じて投与量の調整が必要ですが、セフトリアキソンであり腎機能をあまり気にしなくてよいので便利な一面もあります
時間依存性の抗菌薬で半減期が長いので一日一回の投与でOKです
セフェピム(第四世代)
セフェピムのスペクトラムは
S&S+HMPEK+SPACE(スペース)
SPACEは院内感染で問題になるグラム陰性桿菌の総称です
- Serratia marcesnsセラチア
- Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌
- Acinetobacter spp.アシネトバクター
- Citrobacter spp.シトロバクター
- Enterobacter spp.エンテロバクター
人工呼吸器関連肺炎(VAP)やカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の原因菌にもSPACEが絡むこともあります
緑膿菌もカバーできるので発熱性好中球減少症(FN)で使用されます
スペクトラムが広い場合は、かえって効かない細菌を覚えるのもいいかもしれません
- 腸球菌とリステリア(セフェム系がまったく効かない細菌)
- 嫌気性菌(これもセフェム系の苦手な細菌)
- 特殊な細菌や耐性菌(MRSAとかESBL産生の細菌)
筆者も一度しかであったことがないですが、副作用としてセフェピム脳症というものがあります
特に腎機能が低下しているか患者さんに起こりやすいといわれおり、セフェピムで治療中の患者さんの様子が変だったら疑ってもいいかもしれません